2008年05月01日 (木) | 編集 |

【すべての美しい馬】のコーマック・マッカーシーによる【血と暴力の国】を
【ファーゴ】のコーエン兄弟が映画化した衝撃のサスペンス。
1980年代のメキシコ国境沿いのテキサスを舞台に
麻薬密売に絡んだ大金を手にした男が非情な殺し屋に追われる様子を描き
人間と社会の本質をあぶり出す。
大金を手にした男に、【アメリカン・ギャングスター】のジョシュ・ブローリン。
彼を追う殺し屋を、【海を飛ぶ夢】のハビエル・バルデムが怪演。
また、殺し屋を捕らえようとする保安官をトミー・リー・ジョーンズが演じ
作品の語り手として、ストーリーにさらに深みを与えている。
狩りをしていたルウェリン(ジョシュ・ブローリン)は
死体の山に囲まれた大量のヘロインと200万ドルの大金を発見する。
危険なにおいを感じ取りながらも金を持ち去った彼は
謎の殺し屋シガー(ハビエル・バルデム)に追われることになる。
事態を察知した保安官ベル(トミー・リー・ジョーンズ)は
2人の行方を追い始めるが……。

やっと観てきたんだけど・・・
いや〜難しい。何て書こうかなぁ?(まっ、いまさらだけどね。)
アカデミー賞受賞作ということで、お気楽なハリウッド映画だと思った人や
派手なアクションや銃撃シーンを期待する人にはオススメしません。
見終わった後、隣の席のカップルは「意味がわかんなかった。」と言っていた。
少なくてもエンターテインメントではないね。
ストーリーはシンプルで、CGは使わず、音楽もなく、銃撃戦は少ない。
ブラックジョークはあるけど、あまりの怖さに笑えない。
【ファーゴ】の恐ろしさも凄かったけど、コーエン兄弟が描く緊迫感と恐怖は
言葉では表現できないのよね〜。
彼らの作品は、マニアックすぎて一部の人にしかウケない。
残酷な事件を淡々と描き、後味の悪い終わり方をする。
個性的なキャラクター、乾いた映像、芸術的なカメラワーク、光と影。
これぞ、コーエン兄弟!
得意中の得意技って感じの作品で・・・めっちゃおもしろかったよ。
キチンと理解できたかどうかは別にして・・・。
ハビエル・バルデム演じるへんてこりんなおかっぱ頭の殺し屋は
家畜用のスタンガンで、鍵穴も人間も同じように躊躇なく撃ち抜く。
その殺しに美学はなく、快楽もなければもちろん苦悩もない。
ターミネーターみたいというか、昨今の無差別殺人のようだというべきか・・・。
そんな異様な殺戮を、コーエン兄弟は、淡々と執拗に描く。
そして、私たちが期待する展開をものの見事に裏切る。
ラストには、追う者、追われる者、保安官による銃撃戦があるのかと思いきや
そんなシーンどころか、銃を撃つシーンすらない。
追われる者は、他の人にアッサリ殺されてしまっている。
追う殺し屋は、関係ない事故で重症を負う。
ここで死ねば「悪いヤツは報いを受ける。」と救われるが、全然死なない。
しかも、唯一の正義である保安官は無力だ。
誰も思い通りにはいかない。
観客は中途半端な気持ちで、しかも唐突にエンディングを迎える。
でも、そこが狙いなんじゃないかなぁ?
世の中は不条理で、いつも正義が勝つわけではない。
観客の後味の悪い思いは、保安官のそれと一致する。

邦題がおかしいから「意味がわかんない。」と言う人が多いのだと思う。
タイトルは、【ノーカントリー】ではなく、【No country for old men】。
アイルランドの詩人イェイツの詩からきている。
それは老いたる者たちの国ではない
恋人の腕に抱かれし若者たち
樹上の鳥たち
その唄と共に、死に行く世代たち
鮭が遡る滝も、鯖にあふれた海も
魚も、肉も、鶏も、長き夏を神に委ね
命を得たものは皆、生まれ、また死ぬのだ
この詩は”死への旅立ち”をうたっている。
そしてそれは、ラストのトミー・リー・ジョーンズの夢の話に繋がっていく。
人間が生きる世界は不条理で、しかも老いや死を避けることはできない。
「この土地は人に厳しい。」と言うセリフは
まさに、タイトルの【No country for old men】そのもので
「常識や正義を信じる老人には居場所はない。」と言っているのだ。
アメリカ人が好きな西部劇の時代、古き良きアメリカはもうない。
アメリカという国が失ったもの・・・正義や良心・・・
それを失ったキッカケがベトナム戦争だと言わんばかりに
映画の中にはベトナム戦争への皮肉がチラチラとみえる。
なんでこの作品がアカデミー賞を受賞したんだろう?と不思議だったけど
(おもしろいけど、かなりマニアックだし。)
アメリカ人の中で、イラク戦争とベトナム戦争がシンクロしているのかも?
日本人の私にはよくわからない。
ところで・・・
BOSSのCMで宇宙人を演じているトミー・リー・ジョーンズ。
CMで、日本という国と日本人を理解できずに不思議がっていた彼が
映画の中では、不条理な世界を受け入れられない老保安官だったのが
私にはシンクロしていておかしかった(笑)
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